お客さまと話をしているとIT系の人にたいするクレームが出てくることがあります。真摯に受け止め、うちではそのようなクレームがでないように努めたいです。
その1、ぼったくり。
これが一番おおいです。
・ドメインの更新料10万円とられた。
・サーバー代金初期費用100万円で月10万、後で知ったが格安レンタルサーバーだった。
などなど、そのような話をお客様から聞くと心が痛みます。 大きなプロジェクトであれば、単なる請求書の数値あわせである場合もあるかと思いますが、小さな会社さんのITに対する夢を打ち砕くような状況もよくあります。私の父の会社も使いもしないホームページとEメールアドレスの発行に莫大なお金を払っていたことを後で知りました。
IT業界は黎明期に新しい技術や用語を武器に、なんとなく景気がよかったですよね。その頃といまとを比べたらサーバーも高価だったり、技術者も情報量も少ないゆえの希少性だったり、そういうまっとうな理由がありますので、安易に「ぼったくっていた」とは言い切れないです。市場が成熟して競争がされると値段が安くなりますし、市場自体が広がっていますからそれだけで各サービスの値段は下がっていくのが自然です。お客さんのクレームの中にはその頃支払ったお金と、いま同じことを発注するのに支払うお金とを比べて「ぼったくられた」といっている場合もあります。ですが、そうやって大目にIT業界を擁護しても擁護しきれない現時進行形の「ぼったくり」にもよく遭遇します。
・昔の値段がそのままの場合
・担当者のキックバック代が上乗せされている場合
・見積もっている人がよくわかっていない場合
・悪意のある場合
ぼったくり = IT業界全体。 この印象を抱いている人は多いです。日本人特有の「やさしいお客さま」が光だとすれば、その影です。それに密接に関係するのが次のクレームです。
その2、難解すぎるヨコモジ。
つぎからつぎへと知らない単語が繰り返されると、よくわからないから任せてしまいたいと思うかもしれません。自分の頭がわるいといわれているようで腹が立つかもしれません。「サーバー」「ドメイン」などは代表的なIT用語といえますが、それでさえ普通に暮らしていたら知らなくてよい言葉です。次から次へと登場するIT用語ですが、お客さんが知らなくてはならない用語はひとつもないです。専門用語ですから、専門家がしっていればよい言葉です。そうは言ってもサービスの名前(ツイッターなど)や企業の名前(グーグルなど)は仕方ないです。外人だと思って覚えていただくしかありません。IT用語はものすごい勢いで増えていっていますので、現役で活躍している技術者でさえ覚えるのが大変です。非常に高度な専門性が要求される業界であるという意味では「~~士」と呼ばれる人々(たとえば弁護士)と同じような職種といえますが、一方では若い方を中心に「作り手よりもよく使いこなす人々」もいるという特徴もあります。わからない用語を並びたてられたら、遠慮なく「もっとわかりやすく言って」といってください。わかりやすくいえなければ、話している人自身がよくわかっていない可能性があります。
その3、すぐ「できない」という。
私もいってしまうときがあります。つい。
・予算的にムリ → ムリをすると食べていけなくなります。
・時間的にムリ → ムリをすると体を壊します。
・技術的にムリ → 自分じゃできないこともありますし、誰にもできないようなこともあります。
・倫理的にムリ → 法律にふれるようなことはできません。
・体制的にムリ → 毎日決まった時刻に手動で更新したいとしたら、ある程度の人員が必要です。
理由はさまざまですが、精一杯がんばっても困難なときがあります。
「できないできないってなんでできないの?」ITの仕事の多くはコードを書くことでしょう。そのコードは難解な数式のように見えます。コードが数千行になることは普通で、数千行あるコードが数千を超えるファイルになることも珍しくありません。それらのコードは一文字も間違ってはならず、足りなくてもいけません。そういう世界の話です。
一口にITといっても、内科・外科など医術の世界と同じように得意分野があります。具体的にこれがやりたいということがあれば、それを得意とする人を探してください。苦手とする人に頼むと、見積もりが非常に高い場合があります。もっとややこしいケースでは、低く見積もりすぎて後でトラブルになったりします。
発注会社を選択するコツはもっとあります。ホームページを作りたいというシンプルな要望であっても、それがもたらす目的や効果がご自分ではっきりとしていない限り、われわれが行うお仕事は「ホームページを作ること”だけ”」ではありません。ホームページは場所のようなものです。八百屋をつくるのと大規模商業施設をつくるのとは違うことは誰もが知っていることですが、「ホームページをつくる」という単純なオーダーについても同様な違いがあります。単純作業ではないのです。ですから制作会社が「ホームページ制作~万円」という料金体系にするのはわかりやすくすることが目的であって、本当は心苦しいはずです。
「載せる内容・広告戦略・機能」の三拍子をご自分で計画できる自信があるか、担当の方があなたのビジネスに関してとても親身になって考えてくれるか、あるいは事がそう難しくないか、そのいずれかでなければ不幸な結果になります。ある程度ビジネスが複雑で、ご自身ですべてを把握するのが難しく、お願いする担当者があなたのビジネスを単純に見すぎているとすれば、考え直す時です。
ビジネスとは別に、システムというややこしい要素がこの業界にはつきものです。システムは建築と似ています。構造的で、使うものであり、メンテナンスが必要で、いずれ作り変える必要があります。作って終わりではないのでシステムをつくった人間・企業とずっと付き合っていけそうかどうかは、好き嫌いも含めてとても重要なことです。
最後に、コンサルティングという罠。
専門性という意味でわれわれの仕事にも「~~士」と呼ばれる職種と同じような側面があるということを述べました。「~~士」というのはコンサルタントと似た部分がありますよね。私が日々お客さまと話をしていると似たようなことをしているなと感じることがありますし、お客さんからそういわれることもあります。「Facebookのコンサルティング」「クラウドのコンサルティング」「SEO」「アフェリエイト」など、難解な道具を専門的に教えてくれる人たちがいます。かれらはあなたのビジネスに自分の専門分野を役立てたいと考えています。しかしあなたのビジネスがそれだけで成り立つわけがありません。おいしい料理を作ることがあなたのビジネスだとすれば、彼らがいうことは「この包丁がいかに切れるか」「この鍋がいかにすばらしいか」といっているのと同じです。違うのはよく切れる包丁かどうかを知るのは簡単なのに、このヨコモジがどれほど役立つのかは難しいということです。ドブに捨ててもいいほどのお金と時間があるか、全面的に信頼して任せられる人がいる場合を除いては、あなた自身がそれらがどのくらい役立つかわかるまで、それらに手を出すべきではありません。
というわけで
・ぼったくらない
・わかりやすく話す
・できないといわない
・お客さまのビジネスを考える
ということを軸にこれからやっていきたいと思います。